失恋したり、大切な人と死別したりなど、深い悲しみに直面したときの心理状態を“心が痛い”などと表現することがありますよね。
実は、“心の痛み”というのは単なる比喩的な表現ではなく、医学的な現象であることが研究によって明らかになりました。
なんと心の痛みには、“ブロークンハート症候群”というれっきとした症名まであるのです。どういう症状が出るのか? また、男女で現れ方に違いがあるのかなどブロークンハート症候群の実態に迫ってみたいと思います。
■ブロークンハート症候群って何?
アメリカ・ロヨラ大学の心臓内科医、ビン・アン・ファン博士によれば、“ブロークンハート症候群”とは、親族の死や失職、激しい怒りなど強いストレスや感情の動きに伴う症状であるとのこと。
別名を、ストレス性心筋症。胸の痛みや呼吸困難など心臓発作と似た症状です。幸いなことにそういった症状は時間とともに去ります。
そして通常の心臓病のように、心臓にダメージが残ってしまうようなこともありません。
ファン博士によれば、特に治療をしなくても、数週間でほとんどの人が快復するのだそうです。
一体なぜこのような症状が現れるのでしょうか? 強いストレスを受けると、心臓にはアドレナリンなど大量のストレスホルモンが流れ込みます。これによって心臓に血液を送る動脈が狭まるのです。
これは血栓が動脈につまって血流が悪くなった、本物の心臓発作と同じような状態。ただし、本物の心臓発作と異なり、ブロークンハート症候群では、時間の経過とともに血管や血流の状態は元に戻ります。
しかし、本物の心臓発作なのかそれとも一時的なブロークンハート症候群なのか判別は困難であるとのこと。
なので、胸の痛みや呼吸困難のような症状を感じたら、軽く見ないで救急車を呼んだほうがいいのかもしれません。
■ブロークンハート症候群が危ないのは男女どっち?
ブロークンハート症候群の現れ方には男女で違いがあるのでしょうか?
まず、かかりやすさでいえば、実は女性のほうがリスク大。アーカンソー州立大学のアビシェク・デシュムク博士らの研究によれば、女性は男性よりも7~9倍もブロークンハート症候群にかかりやすいのだそうです。
こんなにも違いがあるなんて、女性は男性よりも繊細だという証拠なのでしょうか。ところが、かかりやすさだけで一概に“女性は繊細、男性は図太い”とは言い切れません。
というのも、男性の場合、配偶者の死亡によるブロークンハート症候群が深刻な事態につながりやすいのです。
ロンドンにあるカス・ビジネス・スクールのヤープ・スプリュー博士らが、保険会社のデータをもとに行った調査によれば、妻を失った夫は、夫を失った妻よりも、悲しみのあまり死に至る確率が6倍も高いことが判明しています。
特に、妻の死後、1年以内に夫も死んでしまうケースが非常に多いそうです。
この研究結果について、心理学者のアンドリュー·パパドプロス氏は以下のようにコメントしています。
「愛する配偶者を失うことは、心に多大な影響を及ぼす出来事です。
特に男性にとっては、生活における役割も一変してしまうことがあります。妻の生前には、料理や洗濯をする必要がなかった人が多いでしょうからね。
またストレスは免疫システムに有害で、健康にも悪影響を及ぼします。配偶者の死後、生きている意味も希望もないと感じる人は特にリスクが高いです」
以上、“心の痛み=ブロークンハート症候群”についてお届けしましたが、いかがでしたか?
悲しみで心が痛くなるのは気のせいではなく、心臓に本当に異変が起こっていることがあるのですね。
自分自身、及び身近な人が深い悲しみに直面している際には、ブロークンハート症候群に陥らないように、十分な心のケアを行いましょう。